自治会・町内会インタビュー 三軒茶屋町会 – 2 防災を視野にいれたミルクストックの取り組み

いちのいちの活用方法としては「会員が個人で投稿できる機能があるけど、その投稿内容を誰が評価するのか、クレームが出たらどうするのかが1番怖い。」

三軒茶屋町会は駅前の商店街とも近いため町会と共に商店会も密接な関りがある地域だ。

石綿さんが子供の頃は小学校の同級生の半分が商店街にある商店の子で、半分くらいがサラリーマン家庭といった割合だったそうだが今ではほとんどが商店を継いでいなかったり、商店をたたんでビルにしてしまっていたりと昔ながらの地域交流の機会が減っているという。

石綿さんは公務員で転勤のない職場だったためご両親と同居して地元に根付いた訳だが、ご友人たちは転勤のある職業の方が多く、転勤を機に世田谷を離れたあと、東京に戻ってきても実家には戻らずマンション暮らしという方が多かったそう。

個人商店の並んだ街並みは昭和40年代後半から50年代にかけて一斉にビル化し、個人商店はマンションに変わり、1階で店を続ける方々もいたそうだが人に店舗として貸し出すケースがほとんどだったという。

昔の商店も何軒もなくなっちゃって、寂しくなったよね。

そんな昔ながらの個人商店が減った商店会でもアーケードの保持や街路灯などの装飾を統一するなどの共通基盤がわかりやすく、会費を支払うための意味や意義がわかりやすい。一方で町会に関しては住民全体で共通基盤を見出す難しさを感じているという。

今年関東大震災から100年ということもあり、東京都では防災という切り口で、町会参加を促す施策などを行っているそうだが、未加入の世帯の方々にどう伝えればその大切さが伝わるのかを石綿さんは思案されている。

これまでも防災・災害対策については強く意識してきたという三軒茶屋町会。
通常の町会費の予算組みとは別に災害対策基金の積立てを行っているそうだ。

また、ちょっとしたベビーブームの頃、「災害時に乳幼児のミルクに困った」という話を聞き、三軒茶屋町会内で運営している保育園と協定を結んでミルクストックの取り組みを行っている。

通常災害時用に町会がミルクをストックすると5年に1回廃棄になる。

それを保育園に町会分のストック分を追加管理してもらうことで廃棄作業がなくなり、常に新しいミルクがストックされ続けるという仕組みだ。

今ではおむつの定量用意もあるそうだ。

こうした防災への取組は一生懸命「どうすればいいのか」を考えているという石綿さんではあるが、いざという時の備えがあるから町会に入ってもらえるかというとそうもいかないと話す。

「本当の災害時に、町会に入っていないから受け入れられないとか、備蓄の提供はできませんって言えるかどうかって問題もあって、何も知らなくても助けを求めてきた人を助けないわけにはいかない。」

本来町会に入っているからこそのメリットではあるものの、入ってなくてもデメリットもない。

確かに、ミルクやおむつの定量保管といっても一人暮らし世帯にはメリットは感じづらいところ否めないような気もする。

石綿さんも日本の社会保障についても助成制度も若い人向けは学校教育のあたりで終わってしまっていて、それ以降の若い人向けサービスが非常に少なかったことが少子高齢化や昨今の町会離れにつながっているのではないかとお話してくれた。

年をとってくると町会なんかでも敬老訪問や夜間パトロールもありがたいなって思えるけれど、若い時にそれをありがたく感じられるかというと、自分たちが参加をすることの必要性を感じれないことで関心を持てないのは否めない。

町会でも夏は盆踊りを企画して子供にお土産プレゼントを配る。夜間パトロールも夏休み企画として子供参加バージョンなども開催してお巡りさんと一緒に街の中を歩くとかもやれているけれど、町会ができる施策ってやはり“子供向け”が限界だという。

建築計画のお知らせが出て、説明会があると町会に入ることを条件に募集してくださいと言って管理組合一体で町会に入ってもらえるといったこともあったが、この10年15年で強制的に加入するものではないといった自由主義の尊重という観点からポスティング対応をしてもらうところまでとなり、マンション1棟に対して1世帯が加入してくれるかどうかという。

分譲ならまだ町会に入ってくれる世帯もぽつりぽつりいるものの、賃貸はまず加入してもらえない。しかしながらPTAで知り合ったり、地元の飲み屋で隣になったりといったそんな偶然の出会いで特別に仲良くなった人に声をかけて入ってもらうというケースもあるそうだ。

役員の方々の個人の繋がりで広がっていくという町会の在り方は大事なかたちのひとつではあると思うものの、実際にそれではかなり難しく、世帯数の多いエリアではその地域に住まう人たちが積極的に興味を示していかないと町会の維持は難しい。

昔は地元のお店に常連客がいて、そこで “おやじの会”的な交流がさかんにあったという。そうした交流の場も高齢化に伴い少なくなり、三軒茶屋町という土地柄地元の人というより他の地域からのお客さんが多いというもの課題のひとつだという。

三軒茶屋町会役員のお二人の理想の町会のイメージは空気のような存在で、いざとなった時にはなんかちょっと役に立つというもの。そういう存在ではありたいと思いながらも誰が空気のような存在を運営するのかっていうと難しい問題だと話す。

町会活動はまるでヒーロー活動だ。

こうしたヒーロー活動をさらに地域の人に身近に感じてもらえるように志賀さんは新たなる取り組みを検討している。次回はそんな志賀さんの取り組みについて紹介したい。

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