世田谷区「いちのいち」導入実証実験意見交換会レポート

世田谷区では、2022年に東京都の「町会・自治会活動への地域交流アプリ等導入支援事業」に参画して「いちのいち」の導入・活用支援をスタートしました。

町会・自治会の活動を、SNSを通じて会員や地域の方に広めることでの活性化を目的として導入いただき、今回の意見交換会ではにすで導入している14の町会・自治会の中から経堂南町会、豪徳寺1丁目山下自治会、代沢中町会、赤堤1丁町会、烏山上町会の5団体の方に登壇いただき、区内の町会・自治会のみなさまとの意見交換を行いました。

今回の意見交換会には2022年6月に世田谷区副区長に就任された松村克彦氏も来場されました。行政事業のDX化に力を入れる「3つのRe・Design(再構築)」の取り組みとして、「参加と協働のRe・Design」を進めているとのお話しがありました。

目次

  • 導入してみて見えてきた、運用の課題
  • デジタル回覧板 or SNS としてのいちのいち活用
  • 利用中または導入検討中の町会・自治会からの質問
  • 最後に

導入してみて見えてきた、運用の課題

今回、代表して登壇いただいた5つの町会・自治体はそれぞれ、会長おひとりで運用されているところや広報や他の役員が協力して運用されているところなど、それぞれの運用方法を模索されていました。

町会・自治会の運用担当者が感じる課題は「どうしたら利用者が増えるか」「どんな投稿をすれば良いか」の大きく2点があげられましたが、この問題、「いちのいち」だけではなくTwitterやInstagramといった一般的なSNSの運用者が抱える問題としてあげられるものとほとんど同じもの。「いちのいち」はデジタル回覧板とSNS機能が一緒になった新しいコミュニケーションツールとして開発されているので一般的なSNS運用で発生する課題と似た課題があがるのは不思議ではありませんが、この意見交換会に参加されているみなさんが町会・自治会活動に精力的に取り組まれているのでより一層難しく捉えている印象を受けました。

経堂南町会 堤 正臣さん

去年の8月から始めまして私と家内と私の娘の3人だけで、そりゃダメだって、町会の役員部に説得しても登録者数は最初15名ぐらい。今120名まで増えて「参加者が120名に増えました」の投稿はわりと見られていた。

豪徳寺1丁目山下自治会 島田俊雄会長

システムを最初に紹介された時は非常にいいなと思いまして。ただ、
登録する方が非常に少ない。とはいえこういうことをやっているなら町会費を払っても良いな、という人も現れました。

代沢中町会 広報 山脇浩子さん

コロナの自粛期間に回覧板が嫌だという声もあり、これから回覧板に代わるのはこうしたSNSやホームページでの発信ではないかなぁと。
「花が咲きましたよ」とかちょっとしたことでも投稿してほしいなぁと思っています。

烏山上町会 広報 芝澤光英さん

町会自体の行事っていうのがかなり少ないんですね。学校と連携している行事に関しては責任を取れないのでと代表の方からはちょっとお断りされてしまったり…

登録者数に関してはスマホをお持ちでない方が多い、登録にメールアドレスが必要といった登録自体のハードルがあり、町会・自治会の会員の中からは紙をなくさないでほしいという声も多く寄せられているそうです。

その一方、回覧のタイムラグなく情報共有ができたり、世帯主以外も回覧内容を確認できるといったメリットの発見もあり、これから初めて町会・自治会に参加するといった若年層の参加ハードルを下げるためにも現状の登録者の少なさを悲観するのではなく、どうすれば登録者が増えてくれるのかといった部分が論点になっていたのは今回ご参加いただいたみなさんが町会・自治会のDX化の重要性を強く感じていらっしゃるからだと実感しました。

登録者の増加施策については、登録用の二次元コードを掲載したチラシを作成して各ご家庭にポスティングさせていただいたり、今回は実証実験ということで小田急のポイントアプリのポイントプレゼントなども行ってみましたが、一般的なSNSのフォロワー増加施策も実際はアカウントを作って終わりではなく、アカウントを知ってもらう施策として二次元コードの設置や口コミをしてもらえる投稿案を企画することが大切になってきます。

こうした運用に関する課題については、いちのいちとしてもカスタマーサポートを通じてみなさんと一緒に考えていきたいと思っています。

デジタル回覧板 or SNSとしてのいちのいち活用

そんな中でも「会長はつぶやき担当」という役割で一般的なSNSのニーズに近い活用をされていたのが赤堤1丁目町会のみなさんです。

赤堤1丁目町会 佐藤由美子さん

私と副会長と会計が運用管理者になっていて、会長は”つぶやき専門”で参加してもらっていて、まちづくりセンターや社協のお知らせよりも会長のつぶやきが一番見られています。お正月の青空の写真とか。
やはり生の声というのがみなさんは楽しいんじゃないかなと。

みなさん回覧板で回しているチラシなどはスキャンしてpdfで投稿して、社会福祉協議会やまちづくりセンターからのお知らせを投稿したり、また、北沢タウンホールでのイベントやせたおん(公益財団法人せたがや文化財団 音楽事業部)のコンサート情報などちょっと町会とは関係ないかな?と思うものも試行錯誤しながら投稿いただいているそうです。

赤堤1丁目町会では会長さんの“つぶやき”が一番人気でコメントがついたりすることもあるそうです。

町会・自治会からのお知らせよりも日常の“つぶやき”の投稿の方が見られていることは“デジタル回覧板”としての側面から考えるとお知らせを見てもらえていないのでは?という不安につながる、という声もありましたが、まずは登録者のみなさんに「いちのいち」を見ることを習慣化していただくためにはとても大切な取り組みです。

Point

いちのいちでは、ホーム画面上にタブが用意されていますのでタブの切り替えで回覧板やお知らせの投稿を見逃さないUIの工夫がされています。

全体の投稿数が増えたり、コミュニティが活性化することで利用者のみなさんがタブの切り替えをうまく使いこなせるようになると回覧板やお知らせの閲覧数の増加も期待できます。

一般的なSNSをはじめ「いちのいち」のようなツールはあくまで「コミュニケーションツール」としてどう活用していくのかが大きなポイントとなってきます。コミュニケーションはひとりでは行うことはできません。必ず2人以上のひとがいないと発生しない現象ですので、いちのいちの運用をひとりで奮闘されている方がいらっしゃれば「いちのいち」は“みんなで協力しあって使うもの”という認識を持っていただきたいと思います。

町会・自治会で採用したツールだから町会・自治会に関する内容以外の投稿をしてはいけない、という認識を強く感じる場面もありましたが、冒頭でもお伝えした通り「いちのいち」はデジタル回覧板とSNS機能が一緒になった新しいコミュニケーションツールです。「いちのいち」のそもそもの開発コンセプトはご近所さん同士のコミュニケーション促進を念頭に置いていますので、未加入の方々に町会・自治会の取り組みを知ってもらう以上に会員の方も未加入の方も“ご近所さん”というつながりでコミュニケーションがとれる場所としてもっと気軽な投稿も行っていただきたいと思います。

中には町会・自治会のお知らせ以外の投稿を手伝ってくれる人がいれば嬉しい、スマートフォンをうまく使って投稿を気軽にできる人にやってもらいたい、といった声もありましたので、この「いちのいちMedia」でもこうした活動に興味を持ってくれる人が町会・自治会に参加するきっかけになれば嬉しく思います。

導入検討中の町会・自治会代表者の懸念点

質疑応答でもみなさん非常に関心が高いようで、やはり注目度が高かったのは「運用コストについて」でした。ここでいう「運用コスト」とは1.導入後の役員の投稿作業などの負担と2.実証実験や助成期間終了後の運用費のことです。

1.導入後の役員の投稿作業などの負担についてはすでに導入されている町会・自治会の方々はこれまでもご紹介したとおり様々な工夫をされていて、回覧板で回すもの、回覧板では回さないけど念のためアナウンスしておきたいこと(イベントなどの開催期日が間近なもの)、などそれぞれの媒体によって掲載内容を工夫されています。

「同じ内容を別々の媒体用に作成するのは二度手間で負担が増えるのでは?」といった質問に対して「負担にならない範囲を決めて行っている」「反応が返ってくると楽しいので負担に思わない」という回答がありました。一般的なものも含めSNSの活用方法としてもこうしたツールを使うことを負担に思わない、むしろ使うのが楽しい、というのが本来的な使われ方であるべきですのでまずは導入されたみなさんが楽しく使う工夫をしてくださるのが一番の近道だと思います。

また、2.実証実験や助成期間終了後の運用費については、世田谷区では引き続き助成の協力をしていただける方向でご検討いただいていますが、デジタル化に伴う紙代などのコストカットからの捻出や登録者の増加にともなう町会・自治会の会員増加(会員費の増加)、そのための運用などについては「いちのいち」でも積極的にサポートしてく所存です。

様々な地域の町会・自治会のみなさんが使って当たり前のツールとして「いちのいち」が定着していくように、次世代に向けての町会・自治会活動に取り組むみなさんのお話がきけたことで今後の「いちのいち」としての課題も発見でき、有意義なお時間をいただきました。

最後に

今回ご登壇いただいた5つの町会・自治会のうち町会・自治会活動のDX化を目指してホームページを開設されているところもありました。どんなひとがどんな活動を行っているのか、こうして情報を公開してくださっていることが大切な活動のひとつだと「いちのいち」は考えていますので、ぜひこの記事を読んでご興味持たれた方はぜひこちらのホームページもご覧ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!